「給料が安い」「残業が多い」など、退職を決意する理由は様々ですが、多かれ少なかれ何かしらの不満を感じていることでしょう。
中途採用の面接では「退職理由」を聞かれることが多いですが、場合によってはマイナスな印象を与えてしまうため、伝え方に注意する必要があります。
この記事では、アパレル業界から転職する際に、マイナス印象にならない退職理由の伝え方について詳しく解説いたします。
転職理由の良い回答例と、悪い回答例についてもご紹介いたしますので、是非ご覧ください。
面接官が退職理由を聞く意図とは何でしょうか？
採用や育成といった手間とコストを掛けて雇い入れても、すぐに退職されてしまっては、意味がありません。
企業にとって、早期離職は損失が大きいため「長く働いてくれる人を採用したい」と考えています。
そのため、応募者の述べた退職理由が自社でも起こり得る内容だった場合、「すぐに退職してしまうのではないか」と思われ、採用される可能性が低くなります。
面接官は、応募者が職場に何かしらの不満を感じていることは理解していますが、その不満をストレートに伝えるのは厳禁です。
どんな組織にも欠点はありますし、自分と合わない人はいるので、「○○という問題があり、それが嫌で退職を考えるようになった」と、単に不満を伝えるだけでは「周囲のせいにする他責思考の強い人物」と判断されてしまいます。
採用される確率を高めるには、「状況を改善するためにどういったアクションを起こしたか」を伝えることが重要です。
「○○という問題があり～という改善案を出したが受け入れられなかったので、退職を考えるようになった」のように伝えるだけで、組織の一員としての責務を果たそうとしたことが感じられます。
面接官が退職理由を聞く理由は分かりましたが、実際に聞かれたらどのように答えれば良いのでしょうか。
ここでは、退職理由を上手に伝えるポイントをご紹介いたします。
面接官は、応募者の不満を聞きたくて退職理由を尋ねているわけではありません。そのため、職場の不満を伝えるだけでは、あなたの印象を損ねてしまいます。
残業の多さが理由で退職を決意したのであれば、「業務上、残業が発生するのは承知の上ですが、1日3時間程度の残業が常態化していました」のように、具体的に話してください。
また、「作業効率を向上させることで改善を試みたが、解決には至らなかった」など、状況改善のために行ったアクションも伝えましょう。
具体的な数字を出せば面接官は客観的に判断できますし、状況改善のアクションを伝えることで、組織の一員として問題解決にあたったことをアピールできます。
退職理由は、伝え方に気を付けないと「働く意識が低い」と判断されてしまうため、ネガティブな表現は避けてください。
残業の多さが理由で退職を決意したのであれば、「業務上、残業が発生するのは承知の上ですが、1日3時間程度の残業が常態化していました」のように、具体的に話してください。
給与が上がらないという理由で転職をする場合、「給与が上がらないので、転職します」だと、他力本願でネガティブな印象を受けてしまいます。
そのため、「自分の成長のためにも、実績が給与に反映される環境で働きたい」などポジティブな印象を受ける表現をすることが重要です。
キャリアプランとの整合性が取れた退職理由には説得力がありますし、長期間の就労が見込めるため、好印象です。
例えば、「私は将来～になりたいと考えているが、現職ではそれを実現できる環境がないため、転職を決意した」のように伝えるといいでしょう。
キャリアプランは志望動機にもつながるため、一貫性を持たせられます。
採用されたいがために、嘘の退職理由を述べてしまう人もいますが、得策ではありません。
嘘の退職理由を伝えると、深掘りされたときに上手く答えられなかったり、他の質問の回答と整合性が取れなくなったりする可能性があります。
また、採用されたとしても、入社後に同じような状況が起これば、再び退職を考えるようになるでしょう。
もちろん、不満をそのまま伝えるべきではありませんが、先述したポイントを押さえて話せばマイナス評価にはなりません。
企業側は、できる限り長く働いてくれそうな人物を採用したいと考えているため、どの職場でも起こり得る理由は伏せるべきです。
特に、人間関係の悩みは避けましょう。
セクハラやパワハラといった重大な問題は別ですが、「職場になじめなかった」「上司との相性が悪かった」のような悩みは職場が変わったところで完全に防ぐことはできません。
そのため、こういった理由を述べてしまうと、早期離職リスクの高い人物と判断されて採用を見送られる可能性が高まります。
また、「社風が合わなかった」、「雰囲気が良くなかった」など、面接官が客観的に理解しづらい漠然とした不満も退職理由としては好ましくありません。
こういった漠然とした不満は、企業側で対策ができず入社後、組織に馴染めるか、馴染めないかを判断することができません。
そのため、不採用の原因になることがあります。
つづいて、悪印象を与える退職理由の伝え方についても把握しておきましょう。
つづいて、悪印象を与える退職理由の伝え方についても把握しておきましょう。
アパレル販売員の場合、大半のブランドが個人の販売ノルマを設定していますが「ノルマがきつかったから退職する」では、責任感や労働意欲のなさを感じさせます。
販売ノルマがきっかけで退職を決意したとしても、伝え方次第でイメージは大きく変わります。
そこで重要になるのが、退職理由の深掘りです。
「ノルマがきつい」と感じる理由を深堀りすると、
・利益優先でお客様が二の次になってしまっている
・お客様に心から喜んで欲しい
・お客様と信頼関係を構築したい
といった、感情があるのかもしれません。
退職理由を、ノルマがきついではなく、「お客様のことを第一に考えて仕事をしたいから」と表現を変えるだけで、ポジティブな表現に置き換えられます。
面接は、応募者と企業の双方が互いの相性を見極める場なので、面接官に対して前職や現職の不平不満を述べるのは不適切です。
特に、勤務していた会社の批判をすると、一気に印象が悪化します。
近年はSNSの普及によって悪評が広まりやすいため、会社の批判をすると「不満を感じたら自社の悪口をあちらこちらで喧伝するのではないか」と警戒されます。
採用される可能性が低くなるため、注意しましょう。
面接では発言内容だけでなく、姿勢や視線、表情、声のトーン、ボリューム、話し方といった非言語的コミュニケーションも注目されています。
ポジティブな退職理由であっても、小声でぼそぼそ話していては納得感を与えられないでしょう。
非言語的コミュニケーションは印象を大きく左右するため、しっかりと目を見てハキハキと話すよう意識してください。
退職理由の良い伝え方と悪い伝え方が分かりましたが、転職経験者はどのように退職理由を伝えたのでしょうか。
ここでは、転職経験者が話した良い転職理由（退職理由）をご紹介いたします。
業務上、残業が発生するのは重々承知していますが、1人で受け持つ仕事量が多く、1日4～5時間程度の残業が常態化していたためです。
このままでは、○○の勉強時間を確保できないばかりか、体調を崩してしまうと思ったため、作業効率を向上させるとともに、増員の要望やアウトソーシングも提案しました。
しかし、受け入れてもらえなかったため、ライフ・ワーク・バランスを改善する目的で転職を決意いたしました。
「1日4∼5時間程度の残業」と具体的な数字を出すことで、長時間労働の実態があったことを客観的に判断できます。
改善案も明確に書かれており、努力はしたが受け入れてもらえなかったという事実の裏付けができているため、納得感のある転職理由です。
また、キャリア構築に必要な勉強時間の確保を理由として入れ込むことで、労働意欲の高さをアピールすることができます。
アパレル販売員の仕事上、個人売上や限定商品の売上といった、目標達成が重要であることは理解しています。
しかし、何よりも重要なのはお客様の満足であると考えています。
利益優先でお客様が二の次になってしまっている現状を打破するために、接客研修の実施などを提案したものの、受け入れてもらうことはできませんでした。
お客様のことを第一に考え、信頼関係を築ける環境で働きたいと思ったため、転職を決意いたしました。
「顧客第一で仕事をしたい」と表現することで、あなたが仕事をする上で重視している価値観を伝えられます。
そして、働く上での価値観は志望動機にもつなげられます。
面接を通して一貫性のある姿勢をアピールすることができるため、面接官に好印象を与えられるでしょう。
前職を退職した理由は、体調不良が原因です。
仕事に打ち込むあまり、過労で体調を崩してしまい、体調管理の重要性を痛感いたしました。
退職後は、治療に専念しておりましたが、先日医師からフルタイムで働いても良いと許可をいただきましたので、問題なく仕事に取り組めます。
この経験を教訓に、今後は徹底的に体調管理を行い、仕事に邁進していきたいと考えております。
体調不良が原因で退職した場合は、そのまま伝えてOKです。
ただし、体調を崩した要因が労働環境であっても、それをストレートに伝えると批判的な印象を与える可能性があります。
過労で体調を崩した事実があるだけで、労働環境が過酷だったことは十分伝わるため「体調管理ができていなかった」と自責にするのが無難です。
また、体調不良の場合は「すでに回復していて問題なく働けること」を伝えて、安心材料を提供しましょう。
長期間同じ会社で働きたいと考えているためです。
私は、アパレル販売員として5年間働いてきましたが、シフト制のため休みが不規則です。
業務上、不規則な勤務体制になることは承知していたものの、子どもの出産・育児をきっかけに、シフト制での労働に限界を感じるようになりました。
今後、長く仕事を続けていくには、不規則なシフト制よりも土日休みの方が適していると考えたため、転職を決意いたしました。
労働環境関連の転職理由は避けた方が無難ですが、転職理由④（OK例文）のように、生活環境の変化にともなうものであれば、マイナスなイメージにはなりません。
「長期就労したい」「仕事に打ち込みたい」など、労働意欲をアピールすることも重要です。
退職理由は、仕事の成果が評価に反映される職場で働きたいと思ったためです。
私は現在、アパレル販売員の職に従事しており、3年連続で個人売上1位を達成しておりますが、お給料は入社時とほとんど変わらず、月収18万円程度に留まっています。
また、現職は年功序列制を採用していますが、大幅な改善を見込めない状況です。
就職活動時点では、やりがいを重視していたため、待遇面の優先順位は低かったのですが、育児や親の仕送りといったライフスタイルの変化にともない、このまま働き続けるのは困難と判断し、転職を決意いたしました。
御社の社歴や年齢に関係なく、成果を重視する理念に感銘を受けました。成果が反映される御社で売上に貢献することで、キャリアアップしたいと考えております。
生活する上で給料は重大な問題ですが、誤解されやすい退職理由のため、よほどの事情がない限り避けた方がいいでしょう。
給料を退職理由として伝える場合は、転職理由⑤（OK例文）のように実績を挙げているのに、評価されていないことを客観的に判断できる材料を提供するのがポイントです。
また、給料制度は企業によって異なります。
批判と受け止められないよう、前職に就職したときと現在で「どういう変化があったのか」を端的に説明しましょう。
また、「成果重視の理念に感銘を受けた」「貢献したい」「キャリアアップしたい」などを伝えると、労働意欲の高さをアピールすることができます。
良い転職理由の回答例をご紹介いたしました。
つづいて、転職理由の悪い回答例を見ていきましょう。
必要最低限の人員数で店舗を回していたため残業が多く、休日出勤になることも珍しくありませんでした。
ハードな労働環境の割には給料も安く、精神的にも体力的にも疲れてしまったため、転職を決意いたしました。
残業や休日出勤といった労働環境に加え、給料についても触れているため、退職理由がぼやけてしまっています。
あれもこれもと退職理由を述べてしまうと、不平不満を吐き出しているように感じられてしまうため、焦点を絞りましょう。
「残業が多い」「休日出勤になることも珍しくない」といった抽象的な表現は、主観的な印象を与えます。
具体的に「〇時間残業があった」、「月に平均何回程度、休日出勤があった」などと説明することが重要です。
劣悪な労働環境に置かれていたとしても、抽象的な表現では面接官に伝わらないので、具体的な数字で伝えましょう。
前職のアパレル販売では、個人の販売ノルマが高く設定されていたため、ノルマをクリアするのが大変でした。
ノルマに追われるのではなく、自分のペースで仕事をしたいと思ったため、転職を決意いたしました。
販売の仕事をする以上、ノルマの達成を目指すのは当然です。
転職理由②（NG例文）のように、「個人ノルマの設定が高い」「自分のペースで仕事をしたい」などと伝えると、「ノルマのある仕事が嫌」と言っているように感じられます。
労働意欲の低さが露呈するため、退職理由の深掘りをしてポジティブな表現で伝えましょう。
毎日、長時間労働を強いられたことで体調を崩したため、短期間で退職しました。
治療に専念した結果、医師からフルタイムの仕事をしても問題ないと言われております。
今後は、体調管理をしっかりと行って仕事に打ち込みたいと考えております。
前職の労働環境が原因で体調を崩したとしても、そのまま伝えると批判的な印象を与えるため、「体調管理ができていなかった」と述べるのが無難です。
退職理由は、働き方を変えたいと思ったためです。
現職のアパレル販売は、シフト制のため予定が立てづらく、プライベートとの両立が難しいと感じました。
仕事に邁進するためにも、プライベートを充実させたいと考えたため、土日休みの仕事に転職しようと決意いたしました。
土日休みにすると応募者のプライベートが充実することは伝わってきますが、企業側のメリットが書かれていません。
転職理由④（NG例文）のような一方的な内容だと、身勝手な印象を持たれます。
「安定した働き方ができるから長く働ける」など、企業側の視点に立って考えることが重要です。
現職のアパレル販売は、頑張って個人ノルマを達成しても給料が上がりません。
業績も良いはずなのですが、ボーナスも出ないので、稼げる仕事に就きたいと思って転職を決意いたしました。
個人ノルマを達成するために頑張るのは当然のことですし、給料やボーナスの規定は会社によって異なります。
転職理由⑤（NG例文）の内容だと、不平不満を言っているように感じられるため、マイナス評価をされてしまう可能性が高いです。
先述の通り、給料に関する転職理由は誤解を招きやすいため、できる限り避けた方が無難です。
面接官が退職理由をヒアリングするのは、
・すぐに退職してしまわないか
・他責思考が強くないか
を見極めるためです。
そのため、退職理由を伝える際は「どの企業にも当てはまりそうな内容」や「批判的な内容」にならないよう注意しましょう。
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